従来の「野心」では、女性のキャリアは拓けない?
「野心的な人」と聞くと、どんなイメージを思い浮かべるでしょうか? 一般的には、「出世を最優先し、どんな状況でも仕事を最優先できる人」が思い浮かぶかもしれません。しかし、この考え方は、現代の働き方に適しているのでしょうか? 特に、仕事だけでなく家庭やプライベートの充実も大切にしたいと考える女性にとって、従来の「野心の定義」は大きな壁となっています。
多くの企業では、長時間労働を厭わないことが「意欲の証」とされ、育児や介護などのライフイベントに合わせて働き方を調整しようとすると、「昇進意欲が低い」と誤解されがちです。しかし、本当に必要なのは「全員が同じスピードで昇進する」ことではなく、個々のライフステージに合わせたキャリアプランを企業が支援することではないでしょうか。
本記事では、女性がキャリアアップを目指しながらも、自分らしいワークライフバランスを実現できる「新しい野心の形」について、具体例を交えて解説します。
「野心的でない」と誤解される女性たちの現状
キャリアアップを阻む「昇進の壁」とは?
企業における昇進の仕組みは、未だに「直線型キャリア」を前提にしています。これは、新卒で入社し、30代までに管理職を目指し、40代でさらに上のポジションに就くというものです。しかし、女性の場合、ライフイベントに合わせて一時的にキャリアのペースを調整することが多く、このモデルに当てはまりにくいのが現実です。
ある企業の調査では、育児を理由に時短勤務を選んだ女性のうち、復職後に昇進の機会を得た割合は30%未満だったことが分かっています(※出典: 厚生労働省「女性活躍推進調査」)。この背景には、「長時間働ける人が評価されやすい」という企業文化が根強く残っていることがあります。
ポイント 昇進モデルが「直線型」だと、ライフイベントの影響を受けやすい
企業側が柔軟なキャリアの形を認めることが重要
「貪欲な働き方(greedy work)」が女性を遠ざける
「貪欲な働き方」とは、「長時間労働をすればするほど評価される」「高収入を得るにはフルコミットが必要」という価値観に基づく働き方のことです。こうした企業文化があると、家庭と仕事を両立しようとする女性にとっては大きなハードルになります。
例えば、あるコンサルティング会社では、「幹部候補生として昇進するためには週60時間以上の勤務が暗黙のルール」とされています。このような環境では、ワークライフバランスを大切にしたいと考える女性が昇進のレースから外れてしまうのも無理はありません。
しかし、近年では「柔軟な働き方を取り入れた企業の方が、優秀な人材を確保しやすい」というデータも出ています。実際に、多様な働き方を認める企業の方が、女性管理職の割合が高くなる傾向があるのです。
ポイント 長時間労働を前提とした働き方は、女性の昇進を阻む要因になる
柔軟な働き方を取り入れる企業は、優秀な人材を確保しやすい
企業が取り組むべき「新しい野心の受け入れ方」
1. 「キャリアのペース」を柔軟に設定する
「昇進=30代のうちに管理職」という固定観念を取り払うことが、女性がキャリアを築きやすい環境づくりにつながります。たとえば、一時的にキャリアのペースを落とし、後からスピードアップできる仕組みを用意することが求められます。
あるIT企業では、育児中の社員が中間管理職として8年間勤務した後、ライフイベントが落ち着いたタイミングで急速に昇進するという事例があります。このように、企業側が柔軟なキャリア設計を支援することで、女性の可能性を最大限に引き出せるのです。
ポイント キャリアの一時的な減速を「意欲がない」とみなさない
昇進のタイミングを柔軟に設定し、継続的な成長を支援
2. 「働いた時間」ではなく「成果」で評価する
長時間労働を評価基準にするのではなく、業務の成果やスキルの向上を重視する評価制度を導入することが、女性のキャリア成長を促すポイントになります。
例えば、ある外資系企業では「アウトプットベースの評価制度」を導入し、働いた時間ではなく、プロジェクトの成果を重視する仕組みに移行しました。その結果、ワークライフバランスを重視する社員でも適切に評価され、女性の管理職登用率が向上したのです。
ポイント 労働時間ではなく、業務の成果で評価する
フレックスタイム制やリモートワークを活用し、多様な働き方をサポート
「新しい野心」を認めることが、企業の成長につながる
「長時間労働ができる人だけが評価される」という価値観は、もはや時代遅れです。企業が「新しい野心」を受け入れ、女性が柔軟にキャリアを築ける環境を整えることで、組織全体の競争力が向上します。
企業が今すぐできること 長時間労働を前提としない評価制度の導入
ライフイベントを考慮した昇進の仕組みづくり
多様な働き方を認める社内文化の醸成
こうした変革を進めることで、企業は優秀な女性人材を確保し、持続的な成長を実現できるでしょう。「新しい野心」を認め、誰もが活躍できる職場をつくることが、これからのビジネスの成功のカギとなるのです。