非営利業界のリーダーはなぜ男性が多いのか?
非営利セクター(NPO・NGO)は、社会貢献を目的とした業界であり、医療、福祉、教育、人道支援など幅広い分野にわたります。この業界では 従業員の約70~75%が女性 であるにもかかわらず、組織のトップを務めるのはなぜか男性が多いのが現実です。
この現象は「ガラスのエスカレーター(glass escalator)」と呼ばれ、 女性が多数を占める職場で、男性が無意識のうちに昇進しやすい仕組みが存在する ことを示しています。特に、男性がリーダーの座に就くことで、組織の収益や影響力にどのような影響を与えるのかが注目されています。
本記事では、非営利業界における 「ガラスのエスカレーター」 の実態をデータとともに解説し、なぜこの問題が起こるのか、そして解決策はあるのかを詳しく掘り下げます。
「ガラスのエスカレーター」とは?「ガラスの天井」との違い
「ガラスの天井」と「ガラスのエスカレーター」の違い
まず、「ガラスの天井(glass ceiling)」という言葉を聞いたことがある方も多いでしょう。これは、 女性がキャリアの途中で見えない壁に阻まれ、昇進しにくい状況を指す言葉 です。一方で、「ガラスのエスカレーター」は、女性が多数派の職場において、 男性が特別な努力をしなくても自然と昇進しやすい構造がある ことを示します。
非営利業界におけるガラスのエスカレーターの実態
非営利セクターにおけるガラスのエスカレーター現象をデータで見ると、以下のような事実が浮かび上がります。
- 男性CEOが率いる団体の収益は、女性CEOの団体より約2倍多い
- 男性CEOの給与は女性CEOより平均27%高い
- 組織規模が大きくなるほど、男性がトップに立つ割合が増加
これらのデータが示すのは、 男性が無意識のうちに優遇され、リーダーの座に就きやすい構造 です。では、なぜこのような状況が生まれるのでしょうか?
なぜ非営利業界では「ガラスのエスカレーター」が起こるのか?
1. 「リーダー=男性」という無意識のバイアス
人は無意識のうちに、リーダーシップと男性的な特性を結びつける傾向があります。これは 「Think Manager, Think Male」(マネージャー=男性と考える)という心理学的概念としても知られています。
特に、非営利セクターのような 「社会貢献」や「ケア」が求められる業界 では、女性が中心的な役割を担うことが一般的です。しかし、組織のトップに求められる「決断力」「交渉力」などは、長年にわたり男性的な資質と見なされがちでした。そのため、女性がリーダーとして認識されにくく、男性のほうが昇進しやすい傾向が生まれてしまうのです。
2. 女性自身が男性を昇進させる傾向がある
意外かもしれませんが、女性の同僚や部下が 男性の昇進を後押しする ケースも少なくありません。例えば、
- 「男性がトップに立つと組織の信頼度が上がる」
- 「男性のほうが資金調達や交渉に向いている」
といった考えが根強く残っているため、女性従業員自身が男性リーダーを推す場面があるのです。
3. 「男性リーダーが男性を引き上げる」構造
多くの非営利団体では、すでに男性リーダーが組織のトップにいることが多いため、次のリーダーとして 自分と似たタイプの後継者を選ぶ傾向 があります。こうした構造が結果的に 男性の昇進を助長 し、ガラスのエスカレーターの仕組みを強化しているのです。
「ガラスのエスカレーター」をなくすためにできること
1. 採用・昇進プロセスの透明化
組織の評価基準を明確にし、昇進が実力によって決まる仕組みを作ることが重要です。
- 評価基準の明確化: 昇進基準や評価方法を社内で共有し、誰もが納得できるプロセスを整備する。
- ジェンダーバイアスの排除: 採用・昇進の際、性別に関係なく公平に評価される仕組みを導入する。
2. 給与と資金配分の平等化
- 賃金の透明性: 給与の格差をなくすために、給与情報の透明化を進める。
- 資金調達のサポート: 女性リーダーが率いる団体への資金支援を増やし、経営基盤を強化する。
3. 女性リーダーの育成とメンタリング
- 女性向けのリーダーシップ研修: 管理職向けの研修を実施し、女性リーダーの育成を促進する。
- スポンサーシップ制度の強化: 女性にも重要なプロジェクトや交渉の場を与え、リーダーとしての経験を積ませる。
まとめ 非営利業界こそ、ジェンダー平等のモデルケースに
非営利業界は「社会のために働く」ことを目的としていますが、その内部には依然として ジェンダー格差 が存在します。しかし、採用・昇進の透明化や女性リーダーの育成を進めることで、 この業界こそがジェンダー平等のモデルケースになることができるのです。
今こそ、 ガラスのエスカレーターを止め、男女が公平に昇進できる仕組みを整える時ではないでしょうか?